アトピー性皮膚炎に対する経口選択的JAK1阻害薬abrocitinibとプラセボ、dupilumabとの比較【JADE COMPARE】
Bieber T, et al. Abrocitinib versus Placebo or Dupilumab for Atopic Dermatitis.
N Engl J Med. 2021; 384: 1101-1112.
目 的
アトピー性皮膚炎の患者において、経口選択的JAK1阻害薬abrocitinib*の有効性をプラセボおよびdupilumabと比較する。
*abrocitinibは低分子JAK1阻害薬であり、アトピー性皮膚炎の成因に関与するインターロイキン(IL)-4、IL-13、および他のサイトカインのシグナルを抑制する。
【関連試験】
JADE MONO-1試験 JADE MONO-2試験 JADE TEEN試験 JADE COMPARE試験 JADE REGIMEN試験
対 象
対象者は、18歳以上、アトピー性皮膚炎歴が1年以上で、ベースライン時に中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者838例。
スクリーニング前の6ヵ月間に外用治療を4週間以上行ったが治療抵抗性を示した、あるいは疾患コントロールに全身療法が必要と判断された患者を採用した。
方 法
●試験デザイン
国際(18ヵ国)、多施設共同、第III相、二重盲検、ダブルダミー、プラセボ対照、ランダム化比較試験
●方 法
対象者をabrocitinib 200mg群、abrocitinib 100mg群、dupilumab群、あるいはプラセボ群のいずれかに2:2:2:1の割合でランダムに割付け、16週間治療を行った。
なお、abrocitinib群では、1日1回経口投与し、dupilumab群では初回600mg皮下投与後、2週間隔で300mgを皮下投与した。
●主要エンドポイント
(1)12週後のInvestigator’s Global Assessment(IGA)反応
(IGAスコアで2段階以上の改善かつ「皮疹なし」あるいは「皮疹ほとんどなし」の判定)
(2)12週後のEczema Area and Severity Index(EASI)-75反応(EASIスコアにてベースラインから75%以上の改善)
結 果
2018年10月29日~2019年8月5日にスクリーニングが実施された。16週間の治療完遂率は91.4%。
平均年齢は37.1~38.8歳、女性41.2~55.4%、白人が7割、アジア人が2割含まれていた。
●有効性
・IGA反応率
12週後のIGA反応率は、abrocitinib 200mg群で48.4%(106/219例)、abrocitinib 100mg群で36.6%(86/235例)、dupilumab群で36.5%(88/241例)、プラセボ群で14.0%(18/129例)であった。
abrocitinib 200mg群とプラセボ群の調整済み群間差は34.8% (95%CI 26.1~43.5、P<0.001)、abrocitinib 100mg群とプラセボ群の調整済み群間差は23.1% (95%CI 14.7~31.4、P<0.001)であった。
・EASI-75反応率
12週後のEASI-75反応率は、abrocitinib 200mg群で70.3%(154/219例)、abrocitinib 100mg群で58.7%(138/235例)、dupilumab群で58.1%(140/241例)、プラセボ群で27.1%(35/129例)であった。
abrocitinib 200mg群とプラセボ群の調整済み群間差43.2% (95%CI 33.7~52.7、P<0.001)、abrocitinib 100mg群とプラセボ群の調整済み群間差は31.9% (95%CI 22.2~41.6、P<0.001)であった。
・abrocitinibとdupilumabの比較
2週間後の痒みの改善率において、abrocitinib 200mg群ではdupilumab群と比較して、有意な改善が認められた(200mg群とdupilumab群の差22.1% [P<0.001]、100mg群とdupilumab群の差:5.2% [P=0.20])。
●安全性
試験期間中、死亡、主要な心血管系有害事象、血栓塞栓症イベントは発生しなかった。悪性新生物が2例(abrocitinib 200mg群1例、dupilumab群1例)発生した。abrocitinib群でもっとも多く報告された有害事象は嘔気で、200mg群で11.1%、100mg群で4.2%に認められた。
結 論
中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者において、abrocitinib 200mgおよび100mgはいずれもプラセボと比較して、アトピー性皮膚炎の兆候・症状を有意に改善した。さらに2週後の痒みの改善においてabrocitinib 200mgではdupilumabを凌ぐ結果が得られた。