カルシニューリン阻害薬の外用により癌のリスクは高まるか?

Lam M, et al. Association Between Topical Calcineurin Inhibitor Use and Risk of Cancer, Including Lymphoma, Keratinocyte Carcinoma, and Melanoma: A Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA Dermatol. 2021; 157: 549-558.

目 的

アトピー性皮膚炎治療の第一選択としてステロイドの外用が行われているが、難治療例や禁忌の患者に対しては、
カルシニューリン阻害薬の外用*が第二選択となっている。
その一方で、2006年、FDAはカルシニューリン阻害薬の外用による癌リスクの上昇の可能性を黒枠警告(Black box warning)とし、その後15年が経過したが、同薬剤による癌リスク上昇の可能性については明らかになっていない。

そこで今回、カルシニューリン阻害薬の外用と悪性新生物のリスクとの関係を評価するシステマティックレビューを行った。

*日本ではタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)

方 法

システマティックレビュー

●方 法

MEDLINE、Embase、Web of Scienceのデータベースを用い、「癌、局所、カルシニューリン阻害薬」の用語で検索し、カルシニューリン阻害薬の外用治療と癌および癌死亡の関係を検証した観察研究を収集した。

データ解析期間は2020年7月~10月。
最終的にコホート研究8件、408,366例(平均年齢17.1歳、女性55.1%)、症例対照研究3件、癌患者3,898例(対照14,026例)、が評価対象となった。

結 果

●癌のリスク

(1)非実薬治療との比較

癌全般のリスクについて検討したコホート研究4件を統合解析した結果、カルシニューリン阻害薬の外用による癌全般のリスクの有意な上昇は認められなかった(リスク比1.03、95%CI 0.92~1.16、異質性P=0.35)。

(2)ステロイド外用との比較

データ得られず

●リンパ腫のリスク

(1)非実薬治療との比較

リンパ腫のリスクについて検討したコホート研究5件を統合した結果、カルシニューリン阻害薬の外用により、リンパ腫のリスク上昇が認められた(リスク比1.86、95%CI 1.39~2.49、異質性P<0.20)。

タクロリムス軟膏治療例に限定すると、異質性が高くなり(異質性P=0.02)、リンパ腫のリスク上昇について有意差はみられなかった(リスク比2.20、95%CI 0.96~5.07)。

(2)ステロイド外用との比較

リンパ腫のリスクについて検討したコホート研究3件を統合した結果、カルシニューリン阻害薬の外用により、ステロイド外用と比較してリンパ腫のリスク上昇が認められた(リスク比1.35、95%CI 1.13~1.61、異質性P=0.50)。

●皮膚癌のリスク
皮膚癌のリスクについて検討したコホート研究を統合解析した結果、(非実薬治療、ステロイド外用との比較に関係なく)カルシニューリン阻害薬の外用による皮膚癌のリスク上昇は認められなかった。

結 論

本システマティックレビューの結果、カルシニューリン阻害薬の外用によりリンパ腫のリスク上昇の可能性が示唆されたが、その他の癌へのリスクは認められなかった。