日本人の中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者における経口JAK阻害薬upadacitinibとステロイド外用薬の併用による安全性【Rising Up 中間解析】
Katoh N, et al. A phase 3 randomized, multicenter, double-blind study to evaluate the safety of upadacitinib in combination with topical corticosteroids in adolescent and adult patients with moderate-to-severe atopic dermatitis in Japan (Rising Up): An interim 24-week analysis.
目 的
Rising Upは日本人の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者のおいて、経口JAK1阻害薬upadacitinibの有効性と安全性を検証する第III相試験である。本報告は24週後の安全性を検討する中間解析の結果である。
*upadacitinibはアッヴィが発見、開発した薬剤で、免疫関連炎症性疾患の病態⽣理に重要な役割を果たすJAK1を選択的に阻害するように設計された経⼝薬である。中等症から重症の関節リウマチの治療薬として承認されている。
【関連試験】
AD Up試験、Rising Up試験、Measure Up 1,2試験
対 象
対象者は、12~75歳、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者272例。
6ヵ月以内にアトピー性皮膚炎の外用薬または全身療法に対して適切な反応が得られなかった患者を採用した。
方 法
●試験デザイン
日本、多施設共同、第III相、二重盲検、プラセボ対照、ランダム化比較試験
●方 法
対象者をupadacitinib 15mg群、upadacitinib 30mg群、あるいはプラセボ群のいずれかに1:1:1の割合で層別(重症度、年齢)ランダム割付けし、16週間それぞれの試験薬を1日1回投与した。なお、全群で必要に応じてステロイド外用薬を併用した。
なお、ステロイドは中等ランクを用い、「皮疹なし」又は「皮疹ほとんどなし」を満たした場合、あるいは3週間連続で中等ランクを使用した場合に、ランクを落とし、7日間1日1回外用を行い、皮疹が再発・持続する限りこれを繰り返した。
16週後(二重盲検期間終了後)、プラセボ群に割り付けられた患者はupadacitinib 15mgまたは30mgのいずれかに1:1の割合でランダム割り付けされた。
●エンドポイント
安全性
結 果
2018年8月9日~2019年12月20日にランダム割付けが実施され、upadacitinib 15mg群に91例、upadacitinib 30mg群に91例、プラセボ群に90例が割付られた。平均年齢は34.7~36.3歳、女性17.8~25.3%。
●安全性
二重盲検期間に、治療を要する有害事象(TEAE)が、upadacitinib 15mg群で56%、30mg群で64%、プラセボ群で42%報告された。また、重篤な有害事象(SAE)は各群で1例ずつ(いずれも成人、upadacitinib15mg:小脳出血、30mg群:単純ヘルペス、プラセボ群:胆石)報告された。
試験期間を通して、upadacitinib 15mg群と比べて、30mg群のほうがTEAEの報告が多くみられた(208件 vs 245件)。多く報告されたのは、ざ瘡(24件 vs 39件)、鼻咽頭炎(30件 vs 38件)、帯状疱疹(5件 vs 11件)であった。
血栓塞栓症イベント、悪性腫瘍、胃腸裂孔、活動性結核、死亡はみられなかった。
結 論
日本人の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者を対象にしたRising Upの中間解析において、upadacitinibの安全性に関する新たなリスクは検出されず、既報の知見と概ね一致した結果であった。