中等症~重症アトピー性皮膚炎に対する経口選択的JAK1阻害薬abrocitinibの有効性と安全性【JADE MONO-1】

Simpson EL, et al. Efficacy and safety of abrocitinib in adults and adolescents with moderate-to-severe atopic dermatitis (JADE MONO-1): a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 3 trial.
Lancet. 2020; 396: 255-266.

目 的

中等症~重症アトピー性皮膚炎の青年、成人患者のおいて、経口選択的JAK1阻害薬abrocitinib単独治療の有効性と安全性を検証する第III相試験

*abrocitinibは低分子JAK1阻害薬であり、アトピー性皮膚炎の成因に関与するインターロイキン(IL)-4、IL-13、および他のサイトカインのシグナルを抑制する。

【関連試験】
JADE MONO-1試験 JADE MONO-2試験 JADE TEEN試験 JADE COMPARE試験 JADE REGIMEN試験

対 象

対象者は、12歳以上、中等症~重症のアトピー性皮膚炎歴が1年以上の患者387例。
スクリーニング前の6ヵ月間に外用治療を4週間以上行ったが治療抵抗性を示したか、疾患コントロールに全身治療が必要と判断された患者を採用した。

方 法

●試験デザイン

国際(オーストラリア、カナダ、欧州、米国)、多施設共同(69施設)、第III相、二重盲検、プラセボ対照、ランダム化比較試験

●方 法

対象者をabrocitinib 200mg群、abrocitinib 100mg群、あるいはプラセボ群のいずれかに2:2:1の割合で層別(IGAスコア 3/4、18歳未満/以上)ランダム割付け、それぞれの試験薬を1日1回、12週間服用した。

試験中、経口抗ヒスタミン薬および保湿剤の使用は許可されたが、外用薬(ステロイド、カルシニューリン阻害薬、抗菌薬、抗ヒスタミン薬)の使用、アトピー性皮膚炎への全身治療、およびレスキュー治療は認められていない。

●主要エンドポイント

(1)12週後のInvestigator’s Global Assessment(IGA)反応  
(IGAスコアで2段階以上の改善かつ「皮疹なし」あるいは「皮疹ほとんどなし」の判定)
(2)12週後のEczema Area and Severity Index(EASI)-75反応(EASIスコアにてベースラインから75%以上の改善)

結 果

2017年12月7日~2019年3月26日にスクリーニングが実施され、abrocitinib 100mg群に156例、abrocitinib 200mg群に154例、プラセボ群に77例がランダム割付された。うち、治療完遂したのは、それぞれ135例、137例、61例であった。
平均年齢は31.5~33.0歳、女性36~47%、白人が68~81%、アジア人が8~17%含まれていた。

●有効性

IGA反応率

12週後のIGA反応率は、abrocitinib 200mg群で44%(67/153例)、abrocitinib 100mg群で24%(37/156例)、プラセボ群で8%(6/76例)であった。

abrocitinib 200mg群とプラセボ群の群間差は36.0%(95%CI 26.2~45.7、P<0.0001)、abrocitinib 100mg群とプラセボ群の群間差は15.8%(95%CI 6.8~24.8、P=0.0037)であった。

・EASI-75反応率

12週後のEASI-75反応率は、abrocitinib 200mg群で63%(96/153例)、abrocitinib 100mg群で40%(62/156例)、プラセボ群で12%(9/76例)であった。

abrocitinib 200mg群とプラセボ群の群間差は51.0%(95%CI 40.5~61.5、P<0.0001)、abrocitinib 100mg群とプラセボ群の群間差は27.9%(95%CI 17.4~38.3、P<0.0001)であった。

●安全性

有害事象の発生はabrocitinib 100mg群で69%(108/156例)、abrocitinib 200mg群で78%(120/154例)、プラセボ群で57%(44/77例)報告された。両abrocitinib群でもっとも多く報告された治療を有する有害事象は、嘔気および鼻咽頭炎であった。一方、プラセボ群ではアトピー性皮膚炎であった。

abrocitinib群では、用量依存性の血小板数(中央値)の減少が認められた。ほとんどの症例では正常範囲以内の変動であった。abrocitinib 200mg群の1例では、治療開始30日目に血小板減少を認め、55日目に投与を中止した。なお、中止後5日で血小板数は正常値に戻った。

結 論

外用療法ではコントロールできない中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者において、経口選択的JAK1阻害薬abrocitinib 100mgおよび200mgの単独治療は有効であり、忍容性にも優れていた。