新型コロナウイルス変異株に対するCovid-19ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)の有効性-ランダム化比較試験の探索的解析

Emary KRW, et al. Efficacy of ChAdOx1 nCoV-19 (AZD1222) vaccine against SARS-CoV-2 variant of concern 202012/01 (B.1.1.7): an exploratory analysis of a randomised controlled trial.
Lancet. 2021; 397: 1351-1362.

目 的

新型コロナウイルス変異株(B.1.1.7)に対するChAdOx1 nCoV-19*(AZD1222)の中和活性をin vitroにて解析するとともに、英国のデータ(COV002**)を用いてB.1.1.7に対する臨床的有効性の事後解析を行った。

*ChAdOx1 nCoV-19は、チンパンジー由来アデノウイルスベクター型ワクチン(アストラゼネカ社)。

**英国で変異株が拡がる以前に行われた中間解析の結果はこちら(

対 象

英国で行われた第II/III相試験(COV002)の有効性解析対象者8,534例。

方 法

●試験デザイン

英国、19施設、第II/III相、単盲検、ランダム化比較試験

●方 法

対象者をChAdOx1 nCoV-19ワクチン群あるいは対照群(髄膜炎菌結合型ワクチン)にランダム割付けし、各試験薬を2回投与した。
ChAdOx1 nCoV-19ワクチンは標準用量を2回投与としたが、一部に対しては、初回は低用量、2回目は標準用量が投与された。

●エンドポイント
主要エンドポイントは、ウイルス検査陽性かつ症候性のCOVID-19

結 果

対象者は2020年5月31日~11月13日に登録された。
女性が59%、白人が92%であった。

2020年10月1日~2021年1月14日に520例が新型コロナウイルスに感染した。NAAT*陽性を確認した検体のうち、配列を決定できたのは311例分401件。うち、219例分を本解析に供した。

219例中、初発の症候性COVID-19は147例、無症候性COVID-19は53例であった。

147例中52例(35%)がB.1.1.7系統によるもので、95例(65%)が非B.1.1.7系統によるものであった。

●臨床的有効性

B.1.1.7系統による症候性COVID-19の発生は、ChAdOx1 nCoV-19群で12/4,244例、対照群で40/4,290例となり、ChAdOx1 nCoV-19の有効率は、70.4%(95%CI 43.6~84.5)であった。

一方、非B.1.1.7系統による症候性COVID-19の発生は、ChAdOx1 nCoV-19群で15/4,244例、対照群で80/4,290例となり、ChAdOx1 nCoV-19の有効率は、81.5%(95%CI 67.9~89.4)であった。

*COVID-19遺伝子増幅検査(NAAT)

●中和試験

ChAdOx1 nCoV-19ワクチンを接種した49例の血清を用いて、中和活性を測定したところ、非B.1.1.7系統に対する中和活性のほうが、B.1.1.7系統に対する中和活性に比し、8.9倍高かった。

結 論

新型コロナウイルス変異株B.1.1.7系統に対して、ChAdOx1 nCoV-19は、それ以外の系統に比べて中和活性が低下していた。
ChAdOx1 nCoV-19のB.1.1.7系統に対する有効率は70.4%であった。